オンラインカジノでの不正行為
ギャンブルがある限り勝つために不正行為を探すプレイヤーは常に存在する。今日これはオンラインギャンブルにおいても見られるようになり、プレイヤーはオンラインカジノで利用される最先端のデジタルセキュリティーを破る方法を探求しているのである。オンラインギャンブルでの不正行為には様々な方法、リスク、報酬がある一方、これらの行為によってゲームを有利に進めようと企むプレイヤーは、何百年も前から行われる伝統を踏襲していると言えるだろう。
ワイルドウェスト
西部劇でカードゲーム中に争いが起きるのは珍しいことではない。 仲裁に入る者はおらず、大抵の場合は撃ち合いによって議論を解決するのが常である。しかし、それが当時の正確な描写とはとても言えない。アメリカの西部開拓時代初期においても実際にはこのようなことは起きなかったが、全くの嘘というわけではない。ポーカーのゲームの最中に実際に口論となり、銃の撃ち合いにより死亡者が出る事故が起きることがあったのは事実である。
一つの有名な例として1869年のクリスマスに起きた事件がある。その日、オールドウェストで最も著名であったジョン・ウェズリー・ハーディンはテキサス州トワッシュという小さい街でカードゲームをすることに決めた。ゲームはクリスマスということもあり上機嫌に行われたが、すぐに状況は変わった。ハーディンはジェームス・ブラッドリーという男と激しい口論となり、二人はトワッシュの路上で決闘することになったのである。ウェズリーの方が腕は上だったがまずブラッドリーが発砲し標的を外す。ハーディンは正確な射撃により相手を殺害したのだ。
このような話は19世紀よく聞かれるものであった。ワイルド・ビル・ヒッコックやドック・ホリデーなどの著名なガンマンはギャンブルにおける揉め事をディーラーよりも銃に頼ったのである。
安全なゲーム環境の発展
時間が経つとともに、ポーカーや他のギャンブルゲームは安全な環境なしに存続できないことは明らかであった。1930年代ラスベガスにおいてカジノが発展し始めると、急速に一般的なギャンブラーにとって運試しの場となった。多くの都市で行われていた違法の地下ゲームで命を危険に晒す必要がなくなったからである。徐々にそれまで西部開拓時代から人気を博した酒場でのギャンブルは影をひそめるようになり、ギャンブルのコミュニティーが台頭するようになるのである。
もちろんそれはこれらのカジノがすべての人にとって安全であるということではなかった。1950年代には犯罪組織がラスベガスストリップの主要なカジノのほとんどを牛耳っていた。これは聞こえが悪いように思われるが、ほとんどの場合公平なゲーム運営が行われていた。実際このような施設の発展にかかる費用が疑わしいところから賄われていたにもかかわらず、この時期に建設された多くのホテルカジノは正当な方法で事業を進めていた。
ラスベガスは正当性を徹底することにより、ガルベストンやホットスプリングなどと比べて迅速に最も重要な違法賭博の主要拠点を排除することに成功した。
もちろん犯罪組織がラスベガスを統治していた頃すべての人が良い待遇を受けていたわけではなく、不正をはたらく者は特にそれが見つかった時に厳しく罰された。当時の関係者の多くは不正をはたらく者に対して二度と過ちを犯さないように「説得」する方法はいくつかあったという。このような者に対してただ 賞金を返済させ、二度と戻らないように脅迫するだけのカジノがあった。不正をはたらく者に対して厳しいカジノでも、被害が小額な場合においてはこの手段は常套であった。
一方大きな不正をはたらく者の場合は有名な映画やテレビ番組でみるような待遇を受けたのである。被害として骨折や顔からの出血などがあり、これはもし次に同じことをした場合よりひどい結果になることを意味していた。通常これらの方法は不正を繰り返させないために十分な処置であったと言えるだろう。
他のプレイヤーは特にポーカーができる場所を探し続けた。カジノポーカーが普及したのは比較的新ことであったためプレイできる場所があまりなかったからである。ドイル・ブランソンやアマリロ・スリムなどの有名なアメリカ早期ポーカーにおける偉人は国内を周ってゲームのできる場所を探したのだ。
しかしこれらのゲームは大きな賞金をもたらす一方危険な要素もあった。ブランソンはゲームプレイ中強盗、暴力、銃撃に遭ったと語っている。このようなゲームは今でも存在するが、現代のポーカーのプロは様々な安全なポーカーを世界中どこでも、さらには自宅からオンラインで楽しむことができるのである。
現代カジノの安全性
現代のカジノにおいても不正行為者はそんざいするが、その影響を最小限に抑えるためにさまざまな方法が使用され、もし不正行為が発生した場合もその後捕まえることが事実上可能となっている。
カジノにとって第一の不正対策はディーラーである。今日ディーラーは非常によく訓練を受けており、仕事に入ってから終わるまで高いクオリティを維持することができている。これによりディーラーの過失により不正行為が行われることが避けられる。ライブカジノをしたことがあればささいなことでも何か問題があるとディーラーはゲームを中断し責任者を呼ぶ。これによりプレイヤーの不正や何かのミスによりゲームの進行に影響が出ることを防ぐのである。
しかしカジノにとっての最大の武器は間違いなくどのライブカジノでも配置されている広範囲にわたるセキュリティーカメラのネットワークによる監視である。カジノにいるすべての人のすべての動向が記録され、のちに検査される。カジノの従業員は常にカメラを用いて監視を行うためハエを捕まえることができるほど疑わしい動きを察知するのである。
近年より高度な技術により従業員は不正行為を行う者やアドバンテージ・プレイヤーと呼ばれる不正までとは言わないがなんらかの方法で勝率を上げる者を判別することができるようになっている。おそらく最も良い例となるのが顔識別ソフトであろう。このソフトを使うことにより、従業員が気づくよりも前にカメラで不正行為者がカジノへ入場する際に識別することができ、歓迎されない客がゲームを始める前に退場させることができるようになった。他のプログラムにより個人・複数のプレイヤーの賭博履歴を追跡し、アドバンテージ・プレイや不正行為などの疑わしいパターンを識別することができる。
一時的に通用した詐欺
どれだけ不正を防ごうとしてもカジノには必ずそれを逃れる集団がいて、捕まるまで大きな額を不法に奪おうとする。最近の一例としてある方法で700万ドルを奪い取ったトラン組織がある。
不正行為は複雑でそれに関わった人は多数いた。トラン組織に属する40人がこの行為によって有罪の判決を受けたのだ。しかし実際に使われた方法は至って単純な者であった。 基本的にはVan Thu Tranと組織のリーダーである夫がアメリカとカナダにある30近くのカジノにおいてバカラ、パイゴウポーカー、ブラックジャックのディーラーを買収していたのである。トランは男性ディーラーを誘惑、買収し計画を成功させるために必要なことをやらせていた。
この不正行為は非常に単純なコンセプトのもとに行われた。それはインチキのシャッフルである。まず最初に配られたカードを見た後にプレイヤーはディーラーが特定のグループのカードを取っておくのを待つのである。これらのカードは「スラッグ」と呼ばれ、次のカード群に持ち込まれ、不正行為者はこれから来るカードを予測することにより大きな賞金を得るのである。
時間とともにメンバーを増やしたトラン組織は隠された機器を使いスラッグごとのカードの順番を追跡する者を集めたのであった。この情報はその後コンピューターのオペレーターに渡り、いつベットするか、それとも待つかを知らせることができたのだ。組織はスカウトをつかいどのカジノでこの方法がより簡単に使えるかを調べてもいた。
不正行為はうまく考えられていたがトラン組織はその後逮捕されることになった。カジノとFBIなどの法執行機関はこの行為の証拠を掴み、現行犯逮捕に至ったのである。2007年に19名が 、その後残りのメンバー逮捕された。
カードのカウント:不正、それとも正当行為?
実際には誤解されやすいが、一般客にとってカードを数えることは最も知られる不正行為と見なされるかもしれない。 「レインマン」のような映画の影響で多くの人がカードをカウントすることはデッキにあるカードすべてを記憶する能力で、それによって何が次に出るかがわかり簡単に勝てると考えている。映画においてもスタッフがそれを認めているが 8つのデッキのシューを一人で数えることは不可能である。
実際にはカードをカウントすることはそれほど難しくなく、しかしそれによって億万長者になれるわけでもない。カードのカウントには様々な方法があるが、どれもどのカードがシューに出たかを記憶し、まだ出ていないものを予想するというものである。シューのカードを把握することによってベットを調整し、チャンス(通常エースやハイカードがシューに残っている時)があるとより多くの金額を賭けたり、動かなかったりする。より高度なシステムではカードをカウントする者はシューを計算しオッズ次第で負けないように保険をかけたりして基本的な戦略を調整しこの利点を活かす。これによりプレイヤーは少しだけカジノから利益を得ることができるが、通常のブラックジャックのプレイヤーと比べてもそれほどの差はないくらいである。
もちろんカジノはそのような利点をプレイヤーが得ることを嫌がる。そのためカジノは多くの方法でカードのカウントを防ごうとするのである。しかしカジノとプレイヤーが両方納得するのは厳密に言ってカードのカウントが不正行為ではないということである。プレイヤーは何も違法な機器を使っているわけではなく、次に来るカードやそれぞれのハンドに影響を与えるわけでもない。ただ戦術的に与えられた情報を収集して賭けているだけなのである。
だが不正行為をしていないからといってカジノ側は黙ってプレイヤーが有利にゲームを進めるのを放っておくわけではない。多くの場所ではカジノがそのようなプレイヤーがゲームすることを拒否することができる。カジノから追放されることもあれば、他のゲームを勧めることもある。そしてプレイヤーの注意をそらし、ゲームから下ろすことも度々ある。
カジノによってはこのようなことを防ぐためにより構造的な変化を導入している。多くのカジノでは現在自動シャッフルが利用され、常にシューにあるカードを再利用している。これによりハンドによりシューの構成が変わらなくなり効果的にカードのカウントを防ぐことができる。これを利用しないカジノの多くはカードをカウントする者にとって有利になるがほとんどの場合その仕組みをよく知らないためゲームに負けるのである。
オンラインでの不正行為
オンラインギャンブルによってプレイヤーにとって自宅からお気に入りのゲームを楽しめる新時代が開かれた。しかしそれにより不正行為の可能性も増えているのが現状だ。そしてオンラインカジノが従来のものよりも安全であるとはいえ不正行為が発生することがある。
もちろん伝統的な不正行為はデジタル社会では通用しない。カードに印をつけたり、裾に隠したり、最後の最後にベットを変えることもできない。実際ほとんどのオンラインカジノゲームではプレイヤーはゲームのバグを利用したり、ハンドやスピンの結果を決める乱数発生器(RNG)にアクセスすることが主流である。現代のオンラインカジノではRNGはプレイヤーが手を打った後になって初めて作動するようにしてこの問題を阻止している。
オンラインカジノとポーカールームが脆弱性を見せる部分が二つある。一つ目はカジノ側からの不正行為である。プレイヤーは負けた時に主要カジノサイトが不正行為を行っていると責めることがあり、ほとんどの場合このようなクレームは事実無根で、ベットの大多数を分析することにより数学的に証明することができる。しかし不正行為をはたらく悪徳カジノがいることも事実である。これらのカジノは一般的に現れてはすぐに姿を消すネット上のブラックリストに入るもので、これが評判の高いオンラインカジノを利用するよう勧められる理由である。ほとんどのカジノは信用できるものだが、新しいものは見知らぬソフトを使い詐欺行為を繰り返すものがあるのだ。
オンラインポーカーも不正行為が問題となっている。初期においてはRNGが完全な乱数ではなく、約20万だけのデッキ設定から選択されることに気づくプレイヤーも存在した。これにより3人のプレイヤーがいるハンドでなにがフロップで来るかを予想することができた。これが初期のオンラインギャンブルが現在のものより安全でないことを示す一例である。
現代においてはアブソリュートポーカーでの「スーパーユーザー」スキャンダルのような問題により社内のプレイヤーが自由にすべてのプレイヤーのハンドを閲覧できる管理アカウントにアクセスすることが可能であることを明らかにした。この不正行為のスキャンダルはオンラインギャンブル史上最も有名で、ありえない勝率を出したグループをプレイヤーたちが発見したことが主要なメディアにより報道された。
プレイヤーは他の方法で不正行為をはたらこうとしたが、主要ポーカールームは常にこれらを摘発してきた。例えば「ボット」というものを開発したものもいる。これは自動コンピューターによる賭けで、24時間事前にプログラムされた戦略でゲームを進めるものである。ハンドを共有しポットを勝ち取るよう共謀しようとした者もいる。しかしポーカールームはこのような行為に対して対策を講じ、違法行為を行う者を告発し、そのような行為を行った者と同席していたプレイヤーに返金するようにした。
不正行為:リスクを冒す価値はあるのか?
結論からすると、カジノでの不正行為はハイリスク・ハイリターンである。カジノ産業では大きな額が動き、不正行為や詐欺をすることは魅力的であると思う者もいる
。しかし全体的に見るとギャンブルにおいて不正行為を行う価値があるとは決して言えない。ライブ、オンラインどちらのカジノにおいてもセキュリティー対策がより多く講じられるようになり、不正行為を行うには複雑な計画、きめ細かな詳細にわたる注意が必要となるのだ。そしてなにもミスを犯さなかったとしてもカジノのセキュリティー、法執行機関、他のプレイヤーの目をひく可能性が常にある。もし見つかった場合、多額の罰金、刑務所行きなど結果は非常に厳しい者となる。多くの人にとってはいつも通りゲームを楽しむことが無難であると言えるだろう。